平成21年度 質的研究法講習会(第2回地域リハビリ講習会)-実施講習会等の概要-

 

テーマ: 臨床に活かす質的研究の方法論 ―当事者の<語り>と出会うために―

開催概要

開催日:   平成21年11月 6日(金)
会 場:   介護老人保健施設イマジン
参加人数:  70名
講 師:   能智正博 (東京大学教育学部大学院 准教授)、
コメンテーター:  加藤公恵 (永生会在宅総合ケアセンター長 看護師)

内容


1.講義 (能智先生)

1)質的研究とはどういうものか
 データの収集や分析や結果の報告において、数量という形式に頼るのではなく、言語的な表現を重視する研究法の総称
2)質的研究の姿勢はどう役に立つのか
 〈語り〉の構造:出来事としての語りをとらえる
3)質的研究の姿勢をどう実現するか
 従来の視点から離れる=トップダウン処理を抑制する
 問いかける: 問いの対象を設定す 、内容/出来事についての問い
4)質的方法を使う研究とはどんなものか
 言語表出が制限された1人の失語症者の〈語り〉を捉える
 作業所に残っていたスナップ写真、面接記録、直接観察から10年にわたる場の意味の変化をとらえる。
 風景としての場⇒容器としての場⇒網の目としての場 という変化の過程。

2.事例報告とディスカッション (加藤先生 能智先生) 如何に<語り>を捉えるか?

本人:デイサービスもショートステイも拒否 「アンナところ行きたくない 家にいたい。」
アマネと家族で強引に説得 「家で長く暮らすために、行かなきゃ!」
リハビリをして家に帰りましょう ADL自立に向けて訓練
「今までお茶は妻がいれてくれたのに病気になって、リハビリだから自分でどうぞといわれる」
「身の回りの事は、誰かがやってくれるから、いいんだ」

感想

・当事者からお話を聞くような場合は,それをできる限り客観的に捉えていく必要があります。ともすると語られた言葉は、研究者というフィルターを介して偏ったかたちで解釈されるかも知れません。自分のものさしを自覚し、自分のものさしから離れて、対象者のものさしを探していく必要があります。問いかけることを熟考し、問いかけのタイプを変えてみたり、当事者の発する言葉を色々な視点から眺めて解釈する必要があるとのことでした。このようにして語られる言葉にその背景も考慮しながらできる限り客観性を持たせていくということが質的研究の姿勢になります。「語りの構造とは、物語の中で展開される」という先生の言葉が印象的です。
 また、先生は質的研究の事例として、言語表出が制限された失語症者の<語り>に注目した例をお示しくださいました。語りを捉えるために画像データ(スナップ写真)を軸に、観察データや他者からの情報なども総合して、<語り>の一側面として、場の意味づけに挑戦したものでした。身体障害者授産施設で働くNさん57歳の場合を取り上げ、Nさんが退院後作業所において、その場の意味を変化させていった過程をわかりやすく説明してくださいました。
 質的研究というと何か難しく感じますが、普段私たちが仕事で接している方たちから聞こえてくる言葉に注目し、その<語り>の背景も含めて、この方はどうしてこのような言葉を言われているのかということを色々な側面から考えてみるということは、いつも私たちに必要な姿勢だと感じました。先生が言われたもうひとつの言葉「ニーズとは当事者との関係性の中から作り上げられるもの」も心に残りました。
(永生病院 木野田典保PT)

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